化学物質過敏症

疾病病マスターに登録

 私たちの身の回りには、膨大な種類の化学物質が溢れています。化学物質過敏症は、コップの水に例えられるように、一定量を越えるとその後は微量の化学物質に接しただけで、数滴でも水が溢れてしまう如く、強い拒否反応を起こします。推定患者数は100万人とも言われ、重症になると外出もままならず、日常生活が困難になります。コップの大きさは人によって違い、いつ自分も発症するかわからず、他人事では済まされません。

 今年10月1日付けで、傷病名マスターに、化学物質過敏症の名前が登録されました。これで正式に国から病気として認められたことになり、病院の医師が正式に化学物質過敏症として診断し、カルテに化学物質過敏症の名前で記入されます。原因物質については特定できないけれど、詳細不明の化学物質に汚染された影響で身体に傷害を受けた病気とされました。ドイツ・オーストリアに続いて、世界で3番目の登録です。

 見えない障害であることから、医療や教育の現場で「気にしすぎ」「怠け者」「わがまま」などと言われ、誤解と偏見を受けてきましたが、これからは医師が化学物質過敏症のことを知らないということはできません。また、今まで自己負担していた治療費に健保が適用されるようになり、多くの患者救済につながります。

 化学物質過敏症は、化学物質の危険性やリスクを十分に知っていれば、防ぐことができると言われています。しかし、プラスチック、合成繊維、医薬品、農薬、洗剤、塗料、ハイテク材料・・・豊かで便利な私たちの生活は、化学物質を原材料にしたたくさんの製品に囲まれています。日本でも1999年にPRTR法が制定され、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が、どのような発生源からどれくらい環境中に排出されたか、というデータを国が集計し公表しています。排出量を把握することにより、有害化学物質の排出量を削減することを目的とした制度です。事業者の努力はもちろんですが、消費者による製品の使用・消費によっても、環境中に排出されていることから、 誰もが化学物質過敏症を発症するリスクがあるという前提で、行政・事業者・市民もそれぞれの立場から取り組むことが大切です。

前の記事

鎌倉市の舵取り