市長案はバイオ施設の代替案になり得るか

6,000トンの生ごみを燃やしてはダメ

 鎌倉市のごみ行政は、深刻な事態です。市はこれまで、バイオマスエネルギー回収施設で生ごみを資源化し、焼却ごみを減量化する方針でした。ところが市長は、バイオ施設計画を中止し、市民や事業者にさらなる分別や処理を求める計画を示しました。市長案が、1万3,000トンの生ごみを削減するバイオ施設の代替案になり得るのか、検証が必要です。

 市長は、「生ごみの資源化が必要、自己処理が理想」と、議会でも地域でも言ってきました。ところが、今回示された市長案では、生ごみの削減量は当初の計画より6,000トンも少なくなっています。そもそもバイオ施設は、生ごみを資源化して燃やすごみを減らすことが目的です。6000トンもの生ごみを燃やす市長案では、バイオ施設の代替案としては不十分です。

 また、市民が自宅で処理する努力目標を、現在(推定2000トン)よりさらに1800トン増やし、今後30年間を見越した数値目標として行政計画に盛り込むことは、市民にプレッシャーをかけることにならないでしょうか。さらにこの案は、事業者に強く分別と資源化を求めるものです。事業者には、廃棄物処理法に規定されている「自己処理責任」の原則で処理していただくのは当然です。しかし、鎌倉市は中小事業者が多く、中でも自宅と店舗併用型が大半を占めています。また、店主が市内在住ではない事業所もあります。事業者の実態は把握していないとの答弁で、クリーンセンターに搬入されるごみ量だけで判断した削減目標は、机上での数字合わせに過ぎません。事業者の現状と向き合い、さまざまな事情を勘案し、きめ細かな対応策を考えない限り、事業者の理解は得られないと考えます。
 
 どんなにいいプランでも、市民の理解と協力がなければ成功しません。市民一人一人が毎日の生活の中で、できる限りごみを出さない暮らしを心がけることは常に求められます。しかし、行政計画はこれを前提とすべきではありません。生ごみを分別して出すまでは協力していただき、収集運搬・処理・処分という一連のごみ処理を、責任を持って公平に行なうことが自治体の責務です。市民の毎日の生活に支障がないよう、安全・確実・継続的なごみ処理政策が求められます。
 
 今泉の老朽化した焼却炉を止め、名越の焼却量を減らすために、生ごみの資源化は必要です。基本はバイオ施設で生ごみを確実に削減し、エネルギーを作り出す。さらに、市長案の市民や事業者による分別の徹底やネットが以前から提案してきた有料化などでもっと削減。両方のプランを合体させれば、現在鎌倉市の燃やすごみ約4万トンを半減させることも可能と考えます。将来の子どもたちにツケを残さず、資源循環型の社会を築くことにつながります。