武田薬品湘南研究所の遺伝子組換え生物漏出事故の顛末

初歩的な人的ミスが原因

 12月21日、鎌倉市議会・観光厚生常任委員会では、遺伝子組換え生物の漏出事故を起こした武田薬品工業に出向き、現場確認を行ないました。その後、参考人としてお越しいただき、質疑を行ないました。

 11月29日、4階の低温実験室の水道水を止め忘れ、一晩中流れたままになったことから、遺伝子組み換え大腸菌・バキュロウィルス・サルモネラ菌を含む廃液が、1階の実験滅菌排水原水タンク(廃液タンク)から1㎥溢れ出しました。1階フロアの防水施工が不完全だったことも重なり、地下の免震室にまで流れ出たという事故です。深夜の研究所は、委託の警備会社社員が3人で警備していました。廃液タンクの満杯警報が鳴ったのが29日の23時です。警備員3人のうち一人は現場に残り、二人は警報の原因特定のために、研究所内を右往左往したようです。30日の夜中1時に社員(施設管理担当者)に連絡があったものの、漏水を容器に受けるように指示を出したに留まり、現場に駆け付けず、状況は好転しませんでした。7時に出勤した研究者が、低温実験室の水道栓が開いていることを発見して、やっと止めたというのが顛末です。およそ半日、水道水が出しっぱなしになっていました。

 事故時の連絡体制と社員教育が不十分だったことが明らかになりました。市への連絡が遅れたことも問題です。私は、作業手順マニュアルの確認や連絡体制の確立をはじめとする再発防止策と併せて、住民への説明、研究所内だけではなく地域の避難訓練の必要性、市民や社外の専門家の力を借りて協議会を作ることを提案しました。

 武田薬品は、町内会にも説明する。避難訓練については自治会・町内会と協議する(市にも相談)。今回の事故をきっかけに、協議会の設置を考える。自分たちにも気が付かないことがあるため、他の専門的な見方を参考にしていく。と答えました。地域住民の皆さんや、心配する市民の声を真摯に受け止めて、リスクコミュニケーションを図ることが一層求められます。

 再発防止策について、21日には鎌倉市役所に出されることになっています。市には、ホームページに配信するよう求めました。また、鎌倉市内にも遺伝子組換え実験をしている企業が3つあることから、遺伝子組み換え実験施設に係る環境安全の確保に関する条例が必要ではないかと提案しました。市民の安心・安全な生活を確保するために、鎌倉市の姿勢を表すものではないかと申し添えました。