鎌倉の緑

 山桜が咲き、山々が淡く彩られています。春爛漫の時に、鎌倉の緑について考えてみたいと思います。その前に、私の故郷で起きていることに触れます。

 私は、木の国山の国の岐阜県出身です。緑豊かな養老山脈のふもとで育ちました。父の話では、昔は山の奥深くに入ると、たまに猿の軍団を見かけ、鹿にも遭遇することがあったそうです。今は、猿・鹿に加わって猪も頻繁に人里に現れます。猿は、屋敷近くまでやってきて、かぼちゃを小脇に抱えて遁走、干してある小豆をざるごと二足歩行で持ち去ったりするという話を、帰るたびに聞くようになりました。笑い事ではなく、日々動物との戦いです。田畑には3段の鉄線が張られています。一番下は姿勢が低い猪用、真ん中は猿用、高いところは飛び越える鹿対策ということで、しかも電気が流されているという管理ぶりです。どうして彼らがやってくるようになったのかは分かりません。母は、「植林をし過ぎた」と分析します。そして、「山をほったらかしにしとくからよくない」と言いました。一旦人の手が入った自然は、人が責任を持って関わっていかないといけないということだと思います。

 鎌倉では、1964年の御谷騒動を発端に、みどりを守ろうという市民の活動が大きくなり、国の古都保存法成立のきっかけともなりました。その後も多くの市民活動団体が中心となり、行政も議会も協力して、残念ながら常盤山は半分開発されてしまいましたが、広町・台峯については全面保全することができました。これらの緑をどう管理していくのかがこれからの課題です。岐阜の山と同じで、人が適切に手を加えなければ、生態系は守れません。市民やNPO主導の市民運営方式での管理を進めていくためには、専門知識を持った職員が核となり、様々な市民の活動をコーディネートすることが必要だと考えます。行政と市民が協働で鎌倉の緑を守り、育てていくことが大切です。

 また、ネット鎌倉は、市民参加型の緑保全として、1999年にリサイクルハウス「みどりショップ」を御成町にオープンしました。やがて15年になります。収益をすべて市内のトラスト団体や市の緑基金等に寄付しています。その総額は約2500万円になりました。日常生活の中で市民が参加できる環境保全の手段です。市民は粘り強く頑張っていますが、行政は、松尾市政になって以来、緑地保全基金への鎌倉市の一般会計からの繰り出しはゼロです。一円も計上されていません。

 前市長時代の負の遺産である観音前マンション開発問題を教訓とすべきであるのに、未だ解決を見ず、またもや極楽寺や鎌倉山の開発が問題になっています。緑保全の視点を明確に持たないことが、違法な許可を出して乱開発を助長させることにつながります。鎌倉の緑は、三浦半島から多摩丘陵につながる緑地帯で、首都圏の貴重なオアシスです。限られた財源の中であっても、緑保全の意思表示を明確にすべきと考えます。