北鎌倉緑のトンネル開削に疑念あり

 1031日と111日の二日間、北鎌倉で匠の市が開催されました。匠の市に出展された作品を拝見し、そのあと北鎌倉緑のトンネルの状況を見に行きました。鎌倉側では、写真を撮っている人、立ち止まってじっと眺めている人、自転車で訪れた人、色々な人に出会いました。壊してほしくないという共通の思いを感じました。

 9月議会の補正予算に、北鎌倉トンネル開削工事費の8020万円が提案されましたが、この結論に至る経緯に疑念があります。これまでに行われた調査の結果の検証と、それを踏まえた今後のトンネル整備の安全性と整備方針の調査・検討を一般社団法人日本トンネル技術協会に450万円で業務委託しました。818日付けで中間報告書が提出され、そこには、「補強案」と「開削案」の2つの方策が併記されていました。しかし、これを受けた鎌倉市道路課は、最終報告を待たず、翌日の819日に「安全対策は開削工法で実施する」とした起案を行い、その翌日の20日には、市長決裁が行なわれています。最終報告書が出される前の中間報告書の段階で意思決定が行われ、しかも市役所内での議論をしていないことは問題です。しかし、もっとおかしなことがありました。実は、7月の終わりから、つまり中間報告書がまとまるよりも前から、市長、副市長、都市整備部により、安全対策の方向性についての協議が行われていたのです。これでは最初から開削ありきの疑念がぬぐえません。450万円かけて調査委託した妥当性が問われます。

 さらなる問題は、トンネル技術協会は450万円で検証業務を受託し、うち320万円は外注に出しています。外注先は、協会の会員であるサンコーコンサルタントです。サンコーコンサルタントは、平成17年と平成25年にトンネル開削工法の図面を引いた会社です。今回の委託は、トンネルの安全性についての過去の調査結果が信頼できるものであったかの検証を行うものであるにもかかわらず、過去の調査を受託して図面を引いた会社が検証作業に大きくかかわっているのです。公平な立場で正確な検証ができたのか、疑義があります。

 また、トンネルの鎌倉よりの入り口付近に個人所有の土地があり、この所有者への市の対応についての問題です。所有者へは、開削の補正予算が決定したら説明するとの答弁でしたが、順番が逆です。個人の財産に関することであり、議会に予算を提案するより先に、所有者への説明がなされてしかるべきです。嫌なことは後回しにし、議会の決定を盾に説明に行くなどという誠意のないやり方には賛成できません。今回の安全対策費の8020万円のうち、5220万円が工事請負費、2800万円がJR東日本へ支払う工事負担金です。工事に関しての地権者の協力の意向確認がない中、工事を支障なく行うことができるのか懸念されます。

 トンネルが通行禁止になり、住民の皆さんは不自由しています。安全対策を急ぐのであれば、誰もが納得できるやり方で進めることが求められるのに、どうして透明性を持った市政運営ができないのだろう。