鎌倉市は、段階的に燃やすごみだけの戸別収集実施の方針
10月29日に鎌倉市議会全員協議会が開かれ、燃やすごみ1品目のみの戸別収集を段階的に実施する方針が報告されました。実施理由は、ごみの減量・高齢者や子育て世代の負担軽減・高齢者の地域の見守り活動・クリーンステーションの収集環境の向上などです。早々平成28年4月からモデル地区についてのみ先行実施し、ほかの地域については平成29年度から順次実施地区を拡大しながら平成30年10月までには全市域に広げる予定ということです。が、問題点が多すぎます。
問題点①市民ニーズがない⇒アンケート調査の結果では、戸別収集未実施の市民は75.2%がステーション収集のままでよいと答えています。戸別収集のニーズは高くありません。
問題点②わずか700トンの削減に4億円⇒燃やすごみ1品目の戸別収集の経費は、鎌倉廃棄物資源協同組合の試算では、年間約7億円で、ステーション収集より4億円の増額になります。減量効果はわずか700トンであり、市民は1トン当たり57万円もの処理経費を負担することになります。民間に焼却に出す場合ですら、運搬費含め4万円前後で、自治体なら2万7~8000円です。エネルギー回収している民間に出したほうがずっとましです。コスト意識が低すぎます。
問題点③有料化の収入は新焼却炉の建設基金に積めない⇒有料化導入に当たり、新焼却炉建設の基金に積むと市民に説明し理解を求めました。有料ごみ袋の収益は2億5000万円との推計です。4億円オーバーでは赤字になり、市民との約束が果たせません。
問題点④資源物の収集は混乱模様⇒ 資源物について収集経費の見直し案は、容器包装プラスチックとペットボトルは週1回のままで変わらず。植木剪定材は月2回。カン、紙類・布類は月2回に変更する案と、地域コミュニティーの推進の観点から集団回収を実施する案が示されました。後者は、自治会の理解と協力が不可欠としていますが、自治会にヒアリングすることもなく提案していること自体に問題があります。戸別収集の経費捻出のために資源物の収集体制を複雑にし、混乱を招いては市民サービスの向上にはなりません。
問題点⑤公平性を欠く順次実施⇒段階的に実施となれば、戸別収集の実施地区と未実施地区が混在し、特定の地域だけが特別なサービスを受けることになり、不平等・不公平です。ましてや鎌倉市は有料化を実施しており、市民はごみ処理費を負担しています。市民に処理費を負担させておきながら、サービスを平等に提供しないのは、不公平の極みです。有料化は「特定の者のためにするもの」であるとの解釈で認められており、特定の者一人一人に公平であるべきです。
他にも問題はあるものの、結論は、税の公平性の観点から戸別収集を実施するのなら全市同時実施ですが、費用対効果が悪すぎることと、将来にわたって大きな財政負担をすることになるため、若い世代にツケを回さないためにも戸別収集は行わない。モデル地区については、ステーションの増加と声掛けふれあい収集の充実で乗り切る。これには、市長が頭を下げることが条件です。年間焼却量3万トンを目指して、再度、市民も事業者も行政もごみ減量に努力する。それでも3万トンを切らない場合は、エネルギー回収しているところに出す覚悟を決める。新焼却炉の規模についても、再度見直しが必要。鎌倉市、今が正念場です。