「想定にとらわれるな」「最善を尽くせ」「率先避難者たれ」と教える片田先生の避難3原則は、大いなる自然に畏敬の念を持ち、行政に委ねることなく、自らに命を守ることに主体的であれという信念に基づいています。少し具体的に言うと、ハザードマップを信じるな。自然は想定を超える事態も当然あり得る。その時できる最善の対応行動をとれ。いざという時、自分が一番最初に逃げる人になれ。というものです。今回の震災で、その教えが生かされました。
サッカー部の中学生が真っ先に高台への避難を開始。先生が言葉を発する前に行動を起こしていた。「津波がくる!早く逃げろー!」と行く道々、小学校に向かって大声で叫びながら駆けて行った。小学校は、ハザードマップでは浸水区域ではなかったため、先生は屋上に逃げろと通達した。しかし、子どもたちは日ごろ一緒に訓練している中学生たちが駆けていく姿を見て、後を追って逃げ出した。小学校は屋上を超えて津波が襲い、想定外の災害になった。下校していた小学生も、防潮堤があるから大丈夫だと言って動こうとしなかったおじいちゃんおばあちゃんを、泣きながら説得し、おかげで難を逃れた。中学生たちは、途中の保育園の園児を抱きかかえながら、小学生の手を取りながら、走り続けた。安全と言われるところまで到達した後も、さらに安全な場所へと避難を続け、それでも最後列の子どもたちは津波に足を取られた。ベストを尽くした結果、全員無事に逃げ切ることができた。
片田先生は、自分の命を守ることに躊躇するな。自分の命を守ることは、人の命を守ることにつながる。子どもは10年教えると大人になり、さらに10年経つと親になる。そして、まっとうな親の元で子どもは育っていく。防災教育は災害文化の礎となり、人の教育だと言われました。
今日は、防災教育の大切さとともに、想定外も十分あり得ることを学びました。防災教育はソフト面の充実ですが、ハード面の整備が同時に必要です。鎌倉市ではまず、高台へ避難できる階段などの整備から始めなければ話になりません。また、沿岸地域の建物の高さ規制も緩和する必要があります。大人が決めたことで、子どもたちの命を奪うようなことは許されません。新築される鎌倉警察署ももっと高さを確保すべきです。「津波があっても犠牲者をゼロにする。津波なんかで人を死なせるな。」片田先生の熱い言葉が響いています。