介護保険の抜本的改革を

2000年から始まった介護保険制度は、3.6兆円だった事業費は2015年には10兆円、2016年は10.7兆円に膨らんでいます。今後ますます拡大が予想されることから、給付抑制が顕著になっています。介護保険は3年ごとに見直され、2015年の改定では、
①予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村が独自に行う総合事業へ移行
②介護老人福祉施設(特養)の入所者を原則要介護3以上に限定
③所得が高い高齢者(年所得280万円以上)はサービス利用料を2割負担(鎌倉市は約23%)
④低所得の施設利用者の負担軽減策である補足給付を、一定額(一人1000万円)預金を持っている人は給付対象から外す
等が主な内容で、財政縮減が優先されたものとなっています。

介護保険は社会保険です。福祉制度とは異なり、経済や家族状況に左右されない普遍的な制度としてスタートしました。行政が対象者を選別し、所得状況や家族状況によって支援を決定する形は、公金で行う措置福祉制度のあり方で、社会保険における受給権の普遍性が損なわれます。

次期2018年の改定では要介護1・2まで給付から外し、介護用品や生活支援・住宅改修などが自己負担の対象に挙がっていました。しかし、介護現場から外さないことを求める声が多く、現状維持の方向に落ち着きそうです。しかし、利用料の一律2割負担や介護報酬の引き下げの議論が引き続き行われています。鎌倉市の事業所はほとんどが小規模で、報酬単価の引き下げによる撤退が懸念されます。

介護現場の実態を把握し、必要な人に必要なサービスが届く制度として維持していかなければ社会保険ではなくなります。介護度が重度な人を措置福祉に切り替えるなどの思い切った改革が必要です。